激高仮面 ( げっこうかめん )

時々、激高して書く仮面ライター 

保育園配置基準は後期高齢・・?

 現在、保育園では4~5歳児の保育士の配置基準は30人に一人だ。この配置基準が定められたのは1948年だ。0~3歳児の基準は何度か見直されてきているのだが、4~5歳児の基準は75年の間一度も変わっていない、つまり後期高齢者と同じなのだ。なんとまあ長い間、子育てに目を向けない政策が続いてきたのだろう。

 保育士一人が30人の幼児を見る、と考えただけでも心配、びっくりする。どんなに大変なことだろう。それを毎日毎日だ。預かる幼児も保護者の要求も多様化し、保育の仕事の多忙化がこんなに語られているのに改善されない。ああ、少子化は、実はこんな子育てに冷たい政治が根底にあるのが一因の一つではなかろうか。

 ここのところ、というかずっと前から少子化対策について国会で論議されている。が、本気さを感じてこなかった。今回、岸田政権は少子化対策を“最重要課題”と言い、何と“異次元”の対策をするそうだ。(やっと配置基準の見直しもあるようだが)

 内閣府のページには、「幼児教育や保育サービスの充実」「子供をもつことを希望する人のために、地域の特性に応じた寄り添い型の支援」「社会全体で子育て世帯を応援する」「子育て支援パスポート事業」等々が書かれている。これらのことをそのまますればいいのではないか。“異次元”などと声高に言わずともできることだ。

 子ども一人当たりいくらかを渡して「ほらこれで何とかしなさい」的な〝せこい〟施策ではなく、75年も続いている保育士の配置基準を先ず変えることが政治の仕事なのだ。

 歴代政権は、少子化は「国家存亡の危機」「国難」と叫び、2007年以来少子化対策担当大臣を設置し16年間で25人を任命している。さて、それで何が変わっただろうか? 

 この大臣は平均1年に満たず交代、軽い閣僚ポストなどと言われ女性が半数、これはこれで社会的性差の点で問題。さらに今年4月からは「こども家庭庁」の担当に変わるそうだ。スローガンを掲げたり声高にアピールしたり、そんなことでなく誠実な改善こそしてもらいたいことだ。

 〝待機児童が減った〟と言うが、実はその裏には残念ながら保育の一部に質の壊れがあった。子どもを思い、独自に保育士を増やして雇用していた自治体に対しては、国の設置基準に戻させて多くの保育児を入園させるという裏技が使われた。単に待機児童という数字を減らすためのものだ。

 職員の半分が保育士なら良いという認可外保育所を増やしたのも同様。近くに新設された保育園は、コンビニ店だった所だ。外から丸見えの窓には目隠しがされ、中に入ると暗い一室に幼児が密状態。元コンビニだから出入口のすぐ前は車が頻繁に通る。あまりに危ないので保護者から意見が出た時は、その後赤い工事用のコーンが置かれただけだった。

 その園にはベテラン保育士はあまり見当たらず園庭もない。今までの保育園との違いに奇異感を持った。これは、営利企業参入解禁、委託費の弾力運用という大規模規制緩和により、利益を求める株式会社やグループ企業が各地で保育園経営に乗り出したからだ。若い保育士ばかりの雇用による人件費の浮いた分を他に回すという経済界の思考も保育の質を壊してしまったのだ。

 総理、異次元でなくていい。子どもを大事にした誠意ある政治を。